節税のポイント
親を扶養するときの節税
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結婚して妻を養うことになれば会社からは家族手当が支給され、税金では配偶者控除が受けられる。子どもが生まれれば、さらに家族手当が加算され、税金では扶養控除が受けられる。では、親を扶養することになった場合はどうか。
まず会社から出る家族手当だが、その待遇は企業によってまちまち。ある一部上場企業では、妻への家族手当月額3万7000円、子どもへは1人あたり2万円、60歳以上の父母・祖父母などには1人あたり1万5000円が支給される。だから、夫婦と子ども2人、老親2人の6人家族の場合、なんと約11万円の手当が出ることになる。これはかなりいいほうで、家族手当を人数に関係なく一律に支給する企業もあれば、老親には子どもに準じて支給している企業、まったく支給しない企業もある。
税金面はどうかというと、扶養している人数だけ、扶養親族として1人あたり38万円の「扶養控除」が受けられる。といっても、これは基本額で、16〜22歳までの育ち盛りは1人あたり53万円、70歳以上の親なら1人あたり58万円の控除(別居の場合は48万円)と年齢によって微妙に変わる。
しかし、扶養の対象になるには次のような条件で親の収入の上限が決まっている。
@年間所得が38万円以内
A給料もしくはパートの場合は年収103万円まで
B年金生活者の場合はその年の12月31日の段階で65歳以上なら公的年金収入178万円まで、65歳未満の場合は108万円まで
また、同居している扶養親族が特別障害者の場合は68万円、70歳以上の場合は88万円(別居の場合78万円)と扶養控除額は高くなるし、別枠で35万円の「特別障害者控除」、27万円の「障害者控除」も用意されている。
こうした税金の控除を受ける場合は、勤務先に申請書を提出すれば年末調整で控除されるシステムになっている。もし知らずに申請しなかった場合は、5年前にさかのぼって税務署に確定申告すれば控除が受けられる。なお、60歳以上の親の年収が180万円未満(60歳以下なら130万円未満)ならば、健康保険にも被扶養者として親を組み込むことができる。
●別居している場合でも受けられる扶養の特典がある。
田舎の両親に生活費を仕送りしているといったケースでも条件が合えば扶養控除が受けられるので、同じように勤務先に申請書を出すとよい。また、健康保険も同じように被扶養者に組み込まれて「遠隔地者証」が発行されるが、対象は健康保険に加入している本人の両親のみ。配偶者の両親に関しては、同居している場合だけしか被扶養者にはなれない。
親の思いは複雑
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年々同居率は減っているものの、「二世帯住宅」「三世帯住宅」といった言葉を耳にするようになった。独身時代は同居していても、結婚後のことはどうしたものか悩むところだ。そこで考えなくてはならないのが、独身時代の親との同居結婚後の親との同居というふたつの視点。
60代前半の親といえば、子どもは20代後半〜30代前半で独身の場合も多い。というわけで、アンケート調査では半数近くの親が独身の子どもと同居中だった。ホンネとしては娘が嫁に行くまで同居を望み、やがて子どもは独立していくのが当然と考えているタイプ、独立するように望んでいるが本人にその意思なしという『あきらめ派』、嫁に行かないからしょうがないという『なりゆき派』など、とりあえず結婚までは同居するという考えだが、結婚問題以外の不満はあまり聞こえてこない。
同居を考えるうえでむずかしいのは、やはり結婚後の同居問題だ。総務庁の住宅統計調査によると、65歳以上で子どもと同居している割合は約58%と半数以上にのぼる。しかし、「将来の子どもとの同居希望」については、同居希望が減る傾向にあり、逆に「わからない」と答える人が大幅に伸びていて、「同居があたりまえ」だった世代とは意識が変わってきている。
アンケート調査でも、同居を希望する親の中には「当然、同居する」伝統タイプのほか、「孫と一緒に生活しいたい」願望タイプや「孫との同居を希望するが、子どもの考え方を優先する」こども主導タイプと、同居への思いが3段階に分けられ、希望しても同居できないかもしれないという親の思いが感じられた。
一方、あくまでも別居を選ぶ親の理由は、自分の体験から「同居は不幸だ」という強い信念を持っていたり、「それぞれの家庭で責任をもつべき」という自立志向、「夫婦2人の静かな生活を大切にしたい」など。こういうタイプの親とは、子どもの都合で同居するなんて考えられそうもない。「味噌汁の冷めないところに住んでくれるのが望ましい」(元教員・女・61歳)と言った状況が、やはり理想なのだろう。